社会制度と矛盾した中国の不動産税

2021年11月30日火曜日

政治 中国

黄色い花の蜜を吸うモンシロチョウ
11月の蝶

日本はこのまま抑え込んで欲しいですね

新型コロナウイルス感染者の数が日本では大幅に縮小し安定/落ち着いた状態になってきていますが、海外に目を移しますと、一時大幅に減ってきていた感染者数が、またトンデモなく増え、しかも、新株(株式市場ではありません)オミクロンが南アフリカ共和国から広がり始めているようですので余談を許さない状況にはなってきています。

緊急事態宣言から解放された日本の都会では、マスクはしつつも解放感を満喫している人々の混雑状況は新型コロナウイルス以前に戻ってきたかのようです。
あまり余裕を持ちすぎますと、日本も欧州と同様の経緯を辿るのではという不安が広がってゆきませんかね。

それでも、来月12月の中旬頃までに感染者数の急激な増加がなければ、日本は新型コロナウイルスの抑え込みに着実に成功しつつあると言えるのでしょうから、万々歳となりますけど…

中国の不動産税は自己矛盾

さて、多少は話題になっております中国が試験的に上海市と重慶市で始めた不動産への課税問題です。

税金の対象となる不動産の私有は基本的に存在しない

中国では、社会主義社会の制度上、不動産の個人(私的)所有が認められておりません。
大都市で高騰してきたマンション価格が問題になっておりますが、日本とは異なり、中国でマンションの一室を買ったとしても、それは所有権ではなく利用権を取得したことになります…一般的には70年間の利用権です。

利用権は不動産税の対象にはならない

従って、個人が所有する不動産はありませんので、個人を対象として不動産に課税するということは実体のない物に課税するという自家撞着に陥っているとしか言いようがありません…端的に言うなら、不動産は国の所有ですので、不動産税は国が支払うのが筋であり、個人が利用権を購入したことによって課税されるとするなら、それは増値税(消費税のこと)です…まあ、しかし、国が税金を支払うということはありえませんが…

香港の報道は経済活動(景気)の大幅な後退を警戒

中国の不動産税が一般化されるならば、それによって中国国内の経済活動は縮小することになり、海外の経済もドミノ効果でネガティブなインパクトを受けることになると香港では報道されています。

中国の不動産税が正式に実施されますと、果たして、そのような経済不安は拡大するのでしょうか…私は、不安になる程に大きな問題は起きないようにも思うのでですが…

試験的に実施されている上海での課税

税率は0.6%なのだそうです…①課税対象金額は市場相場の70%になります
課税対象の不動産は二軒目からのマンションで、しかも、②一人当たりの居住面積として認められている60平米(㎡)を超える面積が対象になります。

例えば、家族三人が住んでいる100平米のマンションの利用権を持つ人が新たに130平米のマンションの利用権を買ったとします。
新しく買ったマンションの単価は40,000元/㎡とします。

課税の計算式

  • 課税対象面積
    100(㎡)+130(㎡)-180(㎡)=50(㎡)
    (180平米は、上記下線部分②の一人当り60平米x3人です)
  • 課税対象額と税額
    50(㎡)x40,000(元/㎡)x0.7(上記下線①)x0.006(税率)=8,400(元)
    8,400元(約15万円)が、追加で支払うことになる税額となります。

不動産税は景気不安を掻き立てる程のものか

単純に考えますと、この程度の課税で二軒目、三軒目を買おうとする裕福な、あるいは、金持ちたちが購入を躊躇するとは思えないのですが…

何故、中国人たちは高価なマンションに投資するのかと言いますと、インフレ率を大幅に超えて値上がりするからです。
高級マンションを持っている人たちの中では、高級マンションは他人に貸して、自分たちは安いマンションや借家に住んでいる人たちも少なくありません。

勿論、他にもっと投資効果が高い、つまり、経済活動がより活発に拡大してゆく分野が出てくるのであれば、課税云々とは関係なく投資資金の流れる先が変わる可能性はありますが、それの現実化に関しては懐疑心があります。
何故なら、地方政府の財政がマンションの値上がりで潤うというメカニズムがありますので、地方政府がそれを台無しにしてしまうということは考えにくいからです。

不動産税の大義名分は素晴らしい

不動産税の目的は不平等化されている社会の繁栄を広く国民が共有できるものにする方針の一環とのことですので、大義名分としては素晴らしいものだと思うのですが…まあ、大都市のマンションが単なる投資対象となってしまい、価格が高騰し、庶民にとっては雲の上の存在でしかなくなってしまった状態を是正しようとする単なる素振りなのかもしれませんが…

今までも、中国政府はマンション価格高騰の抑制策(二軒目、三軒目の購入に対する制限とか庶民も買える価格レベルのマンション建設など)をいくつか出してきていますが、まあ、効果はかなり限定的なんでしょうね。

本気で中国政府がマンション価格の高騰を是正しようとするなら、地方政府が土地開発で財政を潤すというメカニズムを根底から覆す必要があると思うのですが…

しかし、まあ、大都市で生活する庶民が自前の住処を確保することの難しさは中国に限ったことではありませんけどね。

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